伝統構法の古民家のインスペクション
「伝統構法」とは、古民家等の日本の伝統的な木組みの建築構法です。
金物を使わず、「木組み」そのもので家を建てられています。
伝統構法について詳しくはこちらをご覧ください。
古民家の再生を計画する前段として、
現在の建物、床下などの劣化状況、耐震性能の確認をし、再生可能か判断をします。
尚、古民家の鑑定をする専門家が古民家鑑定士、床下の調査を行う専門家が古民家床下診断士、
伝統的構法の耐震診断・耐震補強計画を行う専門家が伝統耐震診断士、
古民家再生計画を策定する専門家が伝統再築士となっています。
古民家の調査(インスペクション)は、
・古民家のコンディションが明確になる「古民家鑑定」
・ロボット調査により床下の状態が判断できる「古民家床下インスペクション」
・専用機器を用い伝統構法の耐震性能を判定する「伝統耐震性能評価」
の3つがあり、これらの内容をまとめた報告書が「古民家再生総合調査報告書」になります。
※福井県内各市町では、伝統的構法の耐震診断及び、補強プラン作成に対して補助金が出る自治体があります。詳しくは、市役所/町村役場にてご確認ください。
古民家再生総合調査報告書の内容について
古民家鑑定書
古民家鑑定書は、古民家に合わせた適確な建物コンディションの調査をおこない、リフォームや購入の判断材料を提供します。
築年数の経過した建物は状態が悪い場合構造体などの改修に多額の出費がかかったりします。
使われている木材や仕上げ材はいいものが使われているがこのままリフォームした方がいいのか、それとも建て替えた方がいいのか。
また不動産として購入予定だが建物を利用したい場合にどの程度改修費用が必要かを知りたいなど、
リフォームや不動産購入を検討する際に必要な情報を資格者が調査して情報提供をおこなう事を目的としています。
古民家床下インスペクション報告書
古民家床下インスペクションは、一般社団法人住まい教育推進協会が認定する古民家床下診断士資格者の在籍する全国床下インスペクション協会が、
シロアリなどをはじめとした床下の害虫診断について自走式点検ロボットモーグル等を使い調査をおこない、
古民家の床下コンディションについての報告をと提案を実施します。本調査を実施することで床下の状態や手入れのポイント等がわかります。
本調査の目的は人体への影響が懸念される薬剤による防虫処理に頼るのではなく、
毎年の点検を実施し、蟻害の原因となる要因を取り除いた床下環境を維持することで健全な建物環境を保全する目的で実施しています。
伝統耐震性能評価報告書
伝統耐震性能評価とは、一般社団法人伝統構法耐震評価機構が認定する伝統耐震診断士資格者が、
常時存在する地盤と建物の微震動を利用し、地盤と建物の振動を同時に測定及び解析し伝統構法の耐震性能を判定します。
伝統耐震性能診断の結果、建物の耐震性能に問題がある場合には合理的にかつ適切に耐震改修方策を設計して、
建物の耐震 補強工事を実施し、その後再度、伝統耐震診断によって、補強工事による耐震性能の改善の効果を
数値的に伝統耐震性能評価指数の検証により確認します。
古民家鑑定について
古民家の構造体、仕上げの劣化状況、現況など、450項目を超える調査項目について
古民家鑑定士資格を有した専門の調査員が、ご自宅にお伺いして、コンディション等を調査いたします。
また、そのデータを元に鑑定書を発行いたします。
鑑定書の内容は、その建物が移築や再生ができるコンディションにあるか、
あるいは古材などの部材が再生可能な強度を有しているかなど、建物の耐久性に関しての判定と、
その建物を売買する場合の価値を固定資産税の評価基準とは別の観点から価格をお付けするものです。
「宅地建物取引業法第34条の2第2項」及び、不動産の鑑定評価に関する法律に基づく不動産の鑑定評価書ではありませんが、
一般社団法人200年住宅再生ネットワーク機構独自の、古民家のリユース促進のために定めた判断基準に沿って価値を表したもので、
古民家売買の法的証明などにはご利用いただけませんが、
古民家の価値を経済性の側面からだけでなく伝統的な建築様式で文化的に残すべきものとして考える機会になると思います。
外部の調査
内部の調査
古民家の床下インスペクションについて
床下インスペクション調査とは、木材の腐朽やシロアリなどの知識を有する古民家床下診断士有資格者が、
床下を自走式床下点検ロボットなどを使い依頼者とパソコンの画面を見ながら点検し、
翌年以降も年に1回点検を継続しできる限り薬剤に頼らずに床下環境を維持するためのものです。
床下点検ロボット(moogle:モーグル)を遠隔操作して調査することにより、
人が入り込めない空間の調査も可能で、パソコンモニタでリアルタイムに点検箇所を確認できます。
床下インスペクションの内容は、古民家再生総合調査に使用されます。
床下をモーグルにて点検
モーグルを遠隔操作し床下の映像を確認
伝統耐震診断について
建物は常に地震発生時以外に置いても微細な振動を受けて建物自体も振動を起こしています。
正確には交通機関や各種機械などから人為的に受ける振動や、風や波浪などの自然現象に基づき地盤が小さな振動をしています。
伝統耐震診断は、伝統構法の耐震診断の知識を持った伝統耐震診断士有資格者により、
微細な地盤の振動と、それに起因する建物の振動を同時に計測しその振動データを解析処理する事で
建物の振動特性値を求め地震の際に建物がどう地震応答での振動をするかを推測し、
耐震補強が必要か否か判断し、補強が必要な場合、補強プランを作成します。
(補強プラン作成は、耐震診断とは別途費用が掛かります。)
実際の計測は、地震計を建物近くの地盤面と、建物中央部の2階床面に水平直角方向に建物の短辺方向、長辺方向に設置して数分間振動を測定、これを5回繰り返しデータを収集して解析を行います。
この耐震診断は、伝統構法の建物、並びに伝統構法の建物に現在の建築基準法に定められている在来工法により増改築された混構造の建物の耐震性能を診断し、また耐震改修工事施工後に再診断を行うことにより、耐震性能の向上を実際に確認することが可能です。
耐震補強計画について
伝統耐震診断により、耐震補強が必要と判定された場合、その旨ご報告させて頂き、
補強プラン作成をお申込み後、伝統耐震診断士有資格者が補強計画を検討し、補強プランの作成を行います。
補強は、在来工法とは違い、基礎は石場建てのままで、
また、筋交いは使用せず、古民家耐震パネル型面格子壁と制震ダンパーでの耐震改修計画を策定します。
布基礎や、べた基礎などの大規模な改修を必要としない、伝統構法の躯体、構造様式をそのまま活用できるなどのメリットがあります。
尚、解析は時刻歴応答解析法で行い、現況に即した補強プランを作成いたします。
古民家再生総合調査、耐震改修工事のフロー図
※伝統耐震診断並びに耐震改修を実施することで、
住宅リフォームかし保険(住宅保証機構 まもりすまいリフォーム保険)を伝統的な建物においても付保できます。